Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “ジェネレイション・ギャップ?”
 


この頃っていうには遅すぎる流行もの
(はやりもの)
ちょっと前には考えられなかった趣向の、
“コンピレイト・アルバム”ってのが人気だそうで。
例えば、90年代ポップスを集めてみたり、
CMソングに使われた楽曲だけを集めたり。
ビートの利いたダンサブルなものだけとか、逆にムーディなバラードだけとか、
対象年代層を限定し、
その世代に馴染みのあるだろう映画やドラマの主題歌を集めたり…という、
歌手やユニット、どうかするとレコード会社の枠さえ超えた協賛型の代物で。
ただ…年代別っていうか、例えば90年代の曲なんてのは、

 「俺の生まれる前の話だしなぁ。」

どうだろこれ なんて、
アルバムのポップなジャケット見ながら、何の気なしに呟けば、

 「…っ☆」

部室のあちこちで、コントのオチよろしく、
ガタガタカクカクと律義にもコケる奴らがたんといる。

 「ちょっと待て、90年代だぞ、90年代。」
 「SPEEDとかチャゲアスとかビーズとか米米だぞ?」
 「ほんのちょっと前の…。」
 「だーかーら。俺の年、まだ一桁なんだぜ?」

  「う……。」

まま確かに。
ベンチにちょこりと腰掛けて、
映画のパンフレットみたいに大判でカラフルな、
小学校の教科書を広げている姿なぞ、
まだ十代にも満たない坊やには違いないのは一目瞭然だからして。
当たり前なことをわざわざ言われ、
それで押し黙るお兄さんたちの側がどうかしていることもまた、
一目瞭然なワケだけど。

 「俺らだって、平成生まれだって言うとびっくりされてる年代なのによ。」
 「大学生なのに? そっか平成生まれがもうそんな年なんだ…なんてな。」

しかもしかも、
そんな自分らが引っ繰り返る存在のこの坊や。
年相応に幼いならともかく、

 「今度“マンマ・ミア”が映画になったんだってね。
  日本でもほら、ミュージカル版が上演されたあれ。」
 「そうらしいわね。」

主演のメリ○・ストリープっていったら、
『ぷらだを着た悪魔』の凄んごいやり手な鬼所長役ではじけてたじゃない。
うんうん…あ・でも俺、
恋愛小説家やってたのが不倫相手の奥さんに復讐される役をやってたのとか、
不老不死の薬飲んでえらいことになるのとか、
割と笑えるのに出てたのの方が好きvv…なんていう。
その年で何でそこまで詳しいのかが疑問な話題を、
そちらさんも趣味が渋いマネージャーのメグさんと、
楽しそうに意見交換なんてしてたりする恐るべき小学生なので、

 「めりる? 何だって?」
 「坊主くらいの年だったら、
  “101”のクルエラ・デビルが出て来なきゃおかしい、女優の名前だよ。」
 「…言わせてもらうと、そりゃグレン・クロースだ。」

この顔触れの中では、頼りにされる知恵者な方の銀が、
それでも呆れ返ってのお答えを出し、

 「そんなもん、今更じゃねぇか。」

ツンさんが何を今更、驚く話でもなかろと、
こっちの面子へこそ呆れてやって。
それで幕となるのがいつものパターンで。


  ―― 今年も相変わらずな皆さんであるらしいです、こちら様。




     ◇◇◇



一応は、リーグ優勝し、昇格を果たしたけれど、
それでもまだまだ、ライスボウルに手が届くランクじゃあないので。
公式的には十二月から、暇な身の上になった格好の賊学大の皆様であり。
そんでも、

 「だからって怠けてんじゃねぇぞ。」

ただでさえ体が固まりやすい季節だし、
それでなくとも十代とはおさらばってロートルに入った訳だから。
ますますのこと、反復練習怠らず、常に体を燃焼系に保っておかないと、

 「どっかの歯医者みてぇに、つまんねぇトコで怪我すんぞ?」
 「今年は無事だよ、お世話様。」

つか、スキーで骨折ったのは後にも先にもあの一度っきりだっての、
一度でも折りゃ十分だ、こんの医者の不養生が…と、
やっぱり“どこが小学生だ”というよなやり取りを、

 「お父さんのお友達とも仲がいいから、身につけちゃったんでしょうよね。」
 「…だろうな。」

そんな約束をいつ取り付けたのか、
坊やからの頼まれものとやらを持って来たらしい、
ドレッドヘアのデンタル・マダムキラーさんと。
傍目には何とも楽しそうに(?)同じレベルで喧嘩している小悪魔坊やだったので。
ここまでは平静を保ててた誰かさんが、
時間差つけての“むっかりモード”へ勢いよくなだれ込み。

 “ありゃまあ…♪”

そんな総長さんの様子へこそ、何をムキになってるやらと、
(あけ)色のダウンジャケットを羽織ったメグさんが、
ついつい…くすすと吹き出しており。

 「何だよ、ついでだから送ってくって。」
 「ば〜か、そんなもん要らねぇよ。」

どうせその“ついで”ってのは、
スキー土産をお姉ちゃんたちに配って回るついでだろ?
ありゃ、バレてたか…なんてな会話をキリにして。
そんじゃまたと手を振って去ってったスポーツカーを見送って。

 「阿含の奴、結構降ったらしい苗場まであの車で行ったんだとよ。」
 「まあ、欧州車は馬力だけはあっから、
  足元さえ固めてありゃあ事故りはせんだろうが。」

跳ね馬のエンブレムでお馴染みな某社のスポーツカーなぞは、
確かにいい車には違いないながら、
クラッチ操作や加速なんぞがとにかく堅くて重いそうなので、
何てことないドライブにとんでもない体力を遣わされる…と、
聞いたことがある筆者だったりするんですが。
さすがに今時の、しかも一般乗用車には、改良もなされているのでしょうしね。
そんなような感慨を抱いての物言いだろうと、
わざわざ確かめずとも察しがつくよな、
相変わらずのツーカーをご披露してから、さて。

 「……。」

丁度並んで見送った格好だったので、
真横に隣り合う位置となった坊やの手元が、葉柱には真上から覗けて。
Sサイズの郵パッククラスだろうか、
小さな坊やの胸元には結構な大きさにも見える箱。
胸糞悪いあのヤロに、この坊やがおねだりしたらしいお土産とやら、
ちょっぴり忌々しげな目付きで見やっておれば。

 「…ちょっと待ってな。」

その箱をぎゅうと胸へと抱きしめ、
今来た道をクラブハウスのほうへと駆け出したヨウイチ坊やだったりし。

 「忘れ物か?」
 「うっせぇなっ、どけよっ!」

乱暴な物言いは今更ながら、
遅れて駐車場まで出て来た皆様、
すれ違った小悪魔さんのお耳が妙に赤かったのを、

 “…いやほれ、今日は寒いしよ。”
 “だよな。”
 “子供は体温高いから、落差も大きいんだろうし。”

あの、いつもいつも高ビーな小悪魔さんが、
まさか何にか照れてるなんて。
思いたかない面々が視線のやり取りだけでそんな風に納得し合う中、

 「………。」

駆け出してからは きっぱりと背中を向けていたからね。
恐らく彼には、そんなお顔までは見えなかったことだろに。
説明もないまま放り出された誰かさんの、
されど…不平も言わず当たり散らしもしない我慢強さは、
いっそギネスブック並かも知れず。
ちょいと目許が眇められているのは凄みを増してて怖かったけれど、
自分らへの不機嫌じゃあないのだしと、
あんまり触れないようにしつつ、自分らのマシンへ足を運べば、

 「…ま、待たせたな。」

どんだけ全速力で駆け戻ったのか、
日頃の年に似合わぬクールさも置いて来たらしい金髪坊や。
今度は頬までも赤くして、葉柱の元へまで再び駆けつけており。
そしてそして…。

 「……帰るぞ。」
 「おお。//////」

こればっかりは、周囲にいた皆様にも判らなかったらしき小さな目配せ。
いやいや、本人たちも気づいてないかも知れない、仄かな呼吸の読み合いとやら。


  ―― だってよ、今日って何日だよ。
      あ、そかそか。


鋭かった眼差しが、かすかながら緩んだ総長さんが、
照れ隠しだろう、駆け寄って来て わざとにどんとぶつかった、
小さな坊やの薄い肩を抱いてやる。
坊やが雪国に出掛けていた人に頼んだのは、
プレゼントのパッケージに使いたかった、
空から降ったる 真っ白いとあるもの。
雪だるまの形にされたそれに埋められて、
坊やのお手製、
一見するとカスタネットみたいだが、
合言葉を話しかけると直通になる“マイクロケータイ”in 真空パックが、
いよいよのお披露目を前にして、
坊やの胸元、さっきと同じ箱の中で、大事に大事に抱えられており。

 『…そんなもん、製氷機とか使えば東京でもすぐにも作れようによ。』
 『うっせぇなっ。気分の問題だってんだよっ。///////』

やっぱりお耳を真っ赤にし、
さっきの歯医者さんへ頼んだ下りは永遠にナイショだけれど。
早く帰ろう、お家に帰ろう。
だって今日は特別な日だものね。
そんな感情は…いつになっても誰であっても、
その胸へ変わらず宿る、まろやかな想いならしいです、はいvv



 HAPPY BIRTHDAY! TO RUI!




  〜Fine〜 09.01.27.


  *すぅ〜〜〜っかり忘れ去っておりました、すんません。(てへvv)←あ
   こちらのシリーズもいつしか時間が止まっておりますが、
   それでも、大学生の皆さんは平成の生まれで、
   坊やに至っては2000年代生まれ。
   書いてるこっちこそ、
   ジェネレーションギャップを感じておりますです。
(苦笑)

めーるふぉーむvv めるふぉ 置きましたvv

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